オリジナルBL小説のネタなどの溜め置場 獅子学シリーズ Puppenspielerシリーズ
樋口琢磨と平穏な夜2

琢磨と慶汰と遊一


遊ちゃんと喧嘩した。喧嘩して部屋飛び出した。外が案外寒くて上着も持たないで出てきたことを後悔したけど今更戻れないし。
こうやって家を飛び出すことは実はよくあって、行くとこは一か所しかなくて、俺はいつもの通りあいつのとこに向かった。

「遅い」
「…つかお前またかよ」
「早く入れてー寒いっ」

琢磨の部屋の前で寒さに負けそうになりながら蹲って帰ってくるのを待って、帰って来た琢磨に嫌そうな顔をされながら部屋に入れてもらう。
仲良い友達はいっぱいいるけど俺と遊ちゃんのことを知ってるのはバンドのメンバーだけだからこうやって逃げ込むのはバンドメンバーのとこしかないわけで、玲ちゃんとこは無理だしカズんとこも微妙だし、いっつも琢磨んとこに転がり込む。琢磨は俺の話ちゃんと聞いてくれるし、過去最高で三日泊まり込んだことがある。

「ほら、」
「サンキュー」

暖かいコーヒー入れてもらって(インスタントだけど)ベッドの横に陣取る。持ってきたのは携帯と財布だけだからその二つをテーブルに置いた。琢磨はキッチンに向かっていて何やら美味しそうな匂いをさせているから夕飯でも作っているんだろう。

程なくして湯気の出た美味しそうなラーメンが二人分出てきて、それを目の前にしたら急に腹が減って鳴き声を上げた。

「で、今日はどうしたんだよ」

ハフハフ平らげて片付けもやってもらって俺はのんびりテレビをつけた。さっき携帯をチェックしたけど着信も受信も無かった。

「……どうせくだらないことで喧嘩したんだろー?」
「ち、違う」
「じゃあ何」
「昨日遊ちゃんが…」

琢磨も戻ってきて俺の横に座る。狭い部屋だから座るとこもあんま無くて、でもベッドの上に座ると怒るから仕方ない位置だ。俺は温かいお茶の入ったカップをぎゅっと握りしめて下を向く。

だって俺は悪くない。
昨日遊ちゃんが女の子と二人でご飯食べてたの見たって学校で聞いて、それちょっと突っ込んだら怒られた。だって遊ちゃんてイケメンだし、ファンの女の子もいっぱいいるし、女友達も多い。違う、別に問い詰めたとかじゃなくて「見たって聞いたよ」くらいのこと言っただけだったのに遊ちゃんが「俺が誰と何しようと勝手やろ」とかいきなり怒って、俺はただ本当に世間話の一つだったのに「いちいち詮索すんな、鬱陶しいわ」とか言われて、俺さすがにムカッときて「なんで!俺遊ちゃんの恋人じゃん!!」「だから何やの!」って。何って酷くね?
琢磨はいつものように嘘っぽくため息をついて俺の頭をポンポンと叩く。それから冷蔵庫から酒を取り出してきて一つくれた。
そこからは琢磨ん家にストックしてあるチューハイやらビールやらを二人で飲んで愚痴大会みたいになって、俺はちょっと酔って遊ちゃんの話ばっかりした。

「前だって遊ちゃん俺のことどうでもいいとか言うし…」
「あいつはいっつもそうじゃん」
「そうだよ…遊ちゃんいっつ、も…」

酒が結構回ってたみたいで、俺は遊ちゃんの話をしながら涙が出た。そんなつもりなんか全然なかったのにいきなりボロボロ涙が出て、自分でも焦った。

「なに泣いてんだよ…」
「だって、遊ちゃんほんっ、とは…俺のこと好きじゃない、かもしんない…」

一回泣きだしたら止まんなくなって、涙と一緒に考えないようにしてた不安とかが一気に溢れだした。そしたらますます涙が出てきて、俺はまともに言葉を紡ぐことも出来なくなってて、しゃくり上げながらめちゃくちゃに泣いた。持ってた缶もローテーブルに置いて、隣にいる琢磨の顔もよく見えないくらい涙が出て、擦った両目が痛かった。

「遊ちゃん…女の子っと、いっしょにいること多いし、」

琢磨が急に缶を置いたから驚いて顔を上げたら視界が暗くなって、一瞬置いてまた明るくなった。目の前には琢磨の顔があって、キスされたのか、と思った。

「なに琢磨、おまえ酔ってるなー」
「酔ってねぇよ」
「酔ってるじゃん」

カラカラと笑い飛ばそうとしたらもう一度口を塞がれて、反射的に琢磨の肩を押し返した。勢いが付きすぎて琢磨の体がローテーブルにぶつかって鈍い音が聞こえた。

「ちょ、なに…」
「もうあんな奴やめろよ。お前泣いてばっかりじゃねぇかよ」

そう言った琢磨の目がすごく怖くて、俺は口を開けたまま何も言えなくなってしまった。
琢磨は俺が何も言わないのをどう思ったのかベッドと自分の体で俺を捕まえて、きゅっと眉間に皺を寄せる。

「遊一なんてやめて俺にしろよ。俺はお前を泣かせたりしない」

琢磨の顔がまた近づいてくる。

−−−−−−−−−−−

遊一は画面をスクロールさせながら思わず笑った。
「なんや、いいとこで終わっとるやん」
上手いこと検索除けされている自分たちのファンサイトに潜り込んで、時たま当たる二次創作にも目を通している。小説だったりイラストだったり、内容は様々だが、みな自分たちを応援してくれているものだと思うと悪い気はしない。
今回は結構気に入っていたりする小説サイトで、別段隠しているつもりもないがプライベートの自分たちをよく分かってらっしゃる、とため息ものの観察能力を持ったファンの一人が管理人らしい。
「感想送っとこ」
メルフォにアクセスしてキーボードを軽快に叩く。
送り終わったら夕飯でも作ろうと思った。

Posted by daisei
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